日本のオンラインゲーム市場は失敗したままか?

「日本のオンラインゲーム市場は失敗した」――ソウル中央大学ウィ教授が語る,オンラインゲームの危機 / 4Gamer.net
過激なタイトルで読む前はネガティブなイメージでしたが、発言の内容は世界のPCやコンシューマ、それに付随するオンラインサービス全般に渡ってよく研究されていると感じました。日本の市場に関しても分析が行き届いており、現実的な視点からの結論も好印象でした。
要するに、オンラインゲームもそろそろゲーマー以外の人達を取り込んでいかないと、市場がどんどん小さくなって冷え込んでいきますよ、という事です。

ウィ氏:
 まずオンラインゲーム産業自体の内部的な要因で言えば,日本のオンラインゲーム産業がマクロ的な戦略に失敗した,というのが挙げられるかと思います。と言うのも,日本でオンラインゲームというと,RMTだとか詐欺だとか引きこもりだとか,いわゆるネガティブなイメージとセットで語られるものになっていますよね。メディアで取り上げられるときは,ほぼ間違いなく「事件」ないし「問題」がある場合だけですし。

4Gamer
 確かにメディアで取り上げられるのは,事件ばかりかもしれませんね。

ウィ氏:
 要するに,オンラインゲームが健全である,悪いものではない,というイメージを作り出すことに,日本のオンラインゲーム産業は失敗してしまったと思うのです。そんな程度のことで!と思うかもしれません。けれど,こういう産業のイメージというのは,実はかなり重要なことなんですよ。甘く見てはいけないのです。
 なぜなら,オンラインゲームが悪いものだ,というイメージが定着してしまうと,新規のプレイヤー,あるいはライトのプレイヤーというのが,入りづらい市場になってしまいます。親も子供に遊ばせようとしなくなりますし,結果として,市場の新陳代謝が衰えてしまう。

この発言をもってタイトルに持ってくるのは、記者の狙いすぎと言うか失敗なんじゃないだろうか。
すでにオンラインゲームを楽しんでいる人達にとっては「またか」と思う事件でも、外から見ればスラム街のような危険なイメージが付きまとい、「用がなければ近付きたくない、近付かせたくない場所」という風に見られている可能性はあります。

ウィ氏:
 これは日本語ではなんと表現すればいいんでしょうかね。プレイヤーからお金を「取り出す」……いや,「奪い取る」?

4Gamer
 あー,「搾り取る」とかですか(苦笑)

ウィ氏:
 そう,それ! 搾り取る!(笑)

日本語って素晴らしいと思ったw

4Gamer
 まぁ内的な要因が「イメージ改善の失敗」だとして,外的な要因はなんでしょうか?

ウィ氏:
 私は,任天堂の「攻撃」が影響していると考えています。

4Gamer
 攻撃というと?

ウィ氏:
 あくまで「オンライン」というファクターの話になりますが,オンラインについての任天堂の戦略とはなんでしょうか? それは,「簡単,安心,安全」を謳っていることです。

4Gamer
 Wi-Fiコネクションなどはまさにそういう戦略ですね。

ウィ氏:
 任天堂の戦略が素晴らしい点は,自分からは「オンラインゲーム」という言葉は使わずに,あるいは使わないことで,既存のPCオンラインゲーム産業との差別化を図っているところです。言い方を悪くすれば,PCオンラインゲームを「危険,不安」なものとして悪者扱いしながら,自分たちのオンラインゲームは「それとは違うよ」「安全だよ」と位置づけている。

4Gamer
 任天堂が意図しているかどうかはともかく,結果としてはそういう格好になってるかもしれません。

確かにオンライン対戦みたいな部分は、あまり強くアピールしていない気はしますね。まずはゲームの面白さありき、というのがあるのかもしれませんが。任天堂のゲームは対戦が面白いものも多いので、誰とでも繋がるオンライン対戦は良いアピールになると思いがちですが、どちらかと言うと家族や友達と遊ぶようなイメージで売っている感じですし。
どうでもいいけど、教授の名前がウィ氏というのは何かの暗示だろうかw

ウィ氏:
 先ほども述べましたが,日本のPCオンラインゲーム産業は,各社が個々に手を広げていって,結果的に市場が拡大していくという,「初期の成長段階」は終了したと思います。これまでは,拡大していく市場(シェア)をオンラインゲーム各社が奪い合うというのが,日本の市場のあり方でしたが,これからは,コンソール市場,モバイル市場,Webサービス市場という,異業種との競争に主軸が移っていくことでしょう。
 そうした状況の中では,とにかく「オンランゲームの信頼性」を取り戻すこと。安心,安全に遊べるサービスであることを認知させること,これがもっとも重要なことだと思います。新規プレイヤーを獲得するためにも,業界が一つになって「産業レベルの戦略」を実施していかなければならない段階になっている。

4Gamer
 日本のオンラインゲーム業界も,一枚岩というわけではありませんよ。

ウィ氏:
 私も日本のオンラインゲーム会社の経営者の方に会うたびに,「やるべきだ」とお話させて頂くのですが,いろいろな問題やらしがらみやらがあって,なかなか難しいようですね(苦笑)。とはいえ,やらなければ厳しい状況が待っているのも事実です。
 私も東京大学の馬場章教授などと一緒に,オンラインゲームの悪いイメージを払拭させるべく活動させて頂いていますけれど,こういった活動は,経営者の方々になかなか興味を持って頂けないのも確かですね。

4Gamer
 すぐにビジネスに直結するというわけではないですからね。

結局のところ、この記事の結論は最後のこの一文に集約されているかと。オンラインゲームもこのままコアゲーマーやライトゲーマーだけを相手にするのではなく、Wiiと同様に全く新しい市場の人達にアピールしていかないと、新しい人材が育たずにひたすら高齢化が続いて緩やかな死が待っています。

ウィ氏:
 ニコニコ動画は,私も注意深く観察していますし,ニコニコ動画がいろいろと議論を呼んでいるのも知っています。

4Gamer
 まぁニコニコ動画は,著作権絡みの議論が多いわけですけど。

ウィ氏:
 韓国だと,「PANDORA.TV」において同様の議論が起こっていますね。

4Gamer
 なるほど。

ウィ氏:
 ただ,この辺りの問題は非常に難しいんですよね。確かに現行法と照らし合わせれば,PANDORA.TVやニコニコ動画は間違いなく「違法」ということになってしまうんですけれど,ビジネスというのは,往々にして法よりも先行して展開されるものなのです。当たり前ですが,新しいビジネスよりも先に法律が整備されている,ということはあり得ない。

4Gamer
 それはそうですね。

ウィ氏:
 ニコニコ動画は,企業のモラルという面から見れば,これは決して誉められたものではないでしょう。しかし,ビジネスという面から見れば,その限りではない。インターネットの発達によって,コンテンツの編集,改変,流通が非常に容易になりました。この状況の中で,何をどこまですれば違法なのかが,曖昧になってきています。
 まぁ,テレビ番組をそのまま流してしまうのは当然違法でしょうけれど,例えば,数十秒程度の切り抜きも本当に駄目なのか。引用という扱いにはできないか?などなど, 旧来の考え方(法律)が追いついていないのは確かなのです。

一部ニコニコ動画の話題にも触れていますが、私がもやもやと感じている事を上手く言い表してくれています。ここいら辺、法律なり規約なりが整備されて、クリアされる日が来るのだろうかというのが、最大の関心事なのですが……相当難しいでしょうね。
改めて文章にまとめるために読み直していたら、最近のひろゆきのインタビューから感じた、著作権の微妙な部分に関してはスルーして法整備が追いつくのを待っているような雰囲気や、丸上げのように完全にアウトなものはどんどん消す、あるいは他所でやってくれと言ったイメージ改善を意識した露骨な発言は、今回の教授の話と被る部分が多くてなかなか面白いと思いました。